血糖値とは、血液中の糖(ブドウ糖、グルコース)の量のことを言います。この血糖値をある一定範囲内に保たれていることは健康上とても大切なことで、そのために体内で分泌されるホルモンがあります。
ところが不思議なことに、血糖値を上げるホルモンは6種類もあるのに対して、血糖値を下げるホルモンはたった1種類(インスリン)しかありません。
なぜなのでしょうか?
その理由を、永田勝太郎先生は下記のように書いておられます。(書籍より一部引用します。)

人類が飢えなくなったのは、つい最近のこと
人類の7000万年にもわたる進化の歴史のなかで、私たちの先祖が米や麦などの炭水化物を食べられるようになったのは、つい2000〜3000年でしかありません。それまで、私たちの先祖は飢えていました。カエルや蛇、魚、虫、木の実など、何でも食べていました。そのほとんどがタンパク質や脂肪であり、炭水化物はほとんどありませんでした。
ヒトが米や麦などの炭水化物を食べられるようになったのは、農耕が始まり、火を自由に操ることができるようになり、煮炊きする鉄鍋ができてからです。
私たちは、甘いものを食べるとなぜかうれしくなります。甘いものに幸福感を感じます。これはなぜかといえば、私たちの先祖はめったに甘いものを食べられなかったからです。柿の実や苺の実を見つけると、大喜びでむさぼり食べたのでしょう。祖先たちも、糖分は身体を元気にし、頭の働きを活発にしてくれることを本能的に知っていたのでしょう。その先祖たちの幸福感が、今の私たちが甘いものを食べるときによみがえるのでしょう。
タンパク質や脂質と比較すると、甘いもの(炭水化物)は大変効率のよいエネルギー源です。
しかし、私たちの祖先の時代には、そんなものはめったに手に入りません。ですから、高血糖になることなど、まずありえませんでした。
一方、空腹でひもじくて、低血糖になることはよくあったのでしょう。低血糖を放置すれば、生命にかかわります。植物人間になったり、死んでしまうことすらあります。そのため、脳は身体を低血糖から守ることに必死でした。したがって血糖値を上昇させるホルモンは6種類もあり、血糖値が下がると速やかに反応して、身体を低血糖から守ってくれているのです。
この数十年、私たちの周りには食料があふれ、飽食の時代にあります。メタボリックシンドローム(中略)が話題になるようになりました。こんな時代は、人類7000万年の歴史のなかでも初めてのことです。
(中略)
残念ながら、身体は急速には進化しません。私たちの身体は、ひもじかった時代のままなのです。
引用文献:『血糖値スパイクが万病をつくる!」永田勝太郎, ビジネス社, 2020, p.152-155.
甘いもの(炭水化物)を取りすぎる時代が来るとは、身体は想定していなかったようです。
血糖値を下げる唯一のホルモン(インスリン)が分泌しすぎて疲れてしまわないように、糖質の摂りすぎには気をつけたいものです。
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