内科医の永田勝太郎先生が、雑誌「すこやかファミリー」(2018年8月1日発行、第7482号)で低血圧についての質問に答えています。
血圧が低くてお困りの方はぜひご参考にしてください。
Q 31歳、女性。低血圧に悩んでいます。
運動したあとに血圧を測っても、上(収縮期血圧)は90mmHg前後、下(拡張期血圧)は50mmHgに届かないこともあります。疲れやすく、たまに軽いめまいもおこります。規則正しい食事と運動を心がけていても、なかなか改善されません。血圧を上げる方法はありますか。(富山県 T)
A 原因によって治療薬が変わる。セルフコントロールも重要
回答者 千代田国際クリニック(東京都)院長 永田勝太郎
(※千代田国際クリニックは閉院しました。)
相談者は、典型的な低血圧のようです。疲労感など症状が明らかなので、早めに治療を受けられることをおすすめします。
低血圧には、体位によって血圧が変動する起立性低血圧と、絶えず血圧の低い本態性低血圧があります。起立性低血圧は、臥位(寝た状態)から立位になると20mmgHg以上血圧が下がる場合をいい、立ちくらみなどが起こります。小児では、20mmHgまで下がらなくとも症状(立ちくらみ、めまい、朝起きられないなど)が出ることがあり、これを起立失調症候群といいます。
また、服用している薬物の影響で血圧が下がることもあります。これを症候性低血圧といい、抗うつ薬などの向精神薬では、よくおきる副作用です。
血圧が下がる場合、心臓のポンプ機能の低下が原因の場合と、末梢の血流に障害がある場合があります。それにより、治療に用いる薬物が変わってきます。専門医によくみていただき、適切な治療を受けてください。
最近、低血圧の原因に、低血糖(反応性低血糖など)がかくれていることがわかり、血糖値についても詳しい検査が必要です。
また、低血圧の症状はうつの症状とよく似ているため、経験の浅い医師は低血圧をうつと判断するケースもあります。もちろん、うつと低血圧はまったく違う病気で治療方針もまったく異なるので、専門医による正しい診断を受けることが必要です。
低血圧の治療には、患者さん自身によるセルフコントロールも重要です。規則正しい生活をすること、3食きちんと食べること、適度な運動をすること、塩分は少し多めにとることなど、患者さんがすべきことはたくさんあります(詳しくは、拙著*にまとめています。)
低血圧を放置すると、さまざまな疾患の土台をつくることにつながります。「低血圧は立派な病気」と心得て、放置せずに、主治医によく相談してください。
*永田勝太郎著『本当は怖い「低血圧」』(秀和システム)

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